種数−面積曲線

species area curve

  現在サイトトップでも使用しているこの図は、2015年4月12日に開催された 日本生物地理学会第70回年次大会で発表したものです。 これまでに手掛けた仕事のうち、データとしての信頼性が高いものを利用して作図しています。 データ数がじゅうぶんではないので10m2 に満たないのですが。

  1980年代に、ベントス研究の分野で、採集効率を推定する試みがいくつかなされています。 費用対効果の面から、何回採泥するのが適切か、というのが根底にあります。 ただし、ある定点で3回なり4回なりの採泥を行って、それぞれを個別のサンプルにした場合でも、 それらの出現種や個体数が一致することは決してありません。
  1990年代にこれを検証するような仕事をいくつか手がけました。 多くの”分析”業者が期待するような結果は得られませんでした。 採泥回数を増やせば増やすほど、新しいものが次々とリストアップされ、 決して飽和曲線にはなりませんでした。機会分布的な種数が圧倒的に多いので、当然と言えば当然です。
  同時期の仕事で、4回採泥した1サンプル中に300種を超えるベントスを検出したこともあります (いやー、この仕事は泣きそうでした ...... 1件体当たり1週間とかかかっていたかもしれません。 大赤字っす><)。

  種数面積曲線の式 S = cAz (または S = azk) に関して、ざっくりとではありますが ポリシー & コンセプト (別ウィンドウに pdf ファイルを開きます)に示しました。 ここでは、そちらで触れていないことをひとつ捕捉します。
  定数 z は、一般的に0.3前後とか、0.15〜0.35くらいとか言われますが、 分散能力の高いものは値が低く、分散能力の低いものは値が高い(Wilson 1992 p.426) という視点です(ぼくは検証が難しそう、と書いちゃってますが)。 そして、値の高いものほど一定面積の開発によって消滅する種数が大きい、 と言い換えられ、最終的な主張「種の保全は面積の保全」につながっていきます。
  ぼくはもう長いこと東京湾を底生生物の視点から見てきたので、ダイレクトに実感できます。 ただ残念ながら、多くの同業者や発注者はこれに共感してくれてないんですよね。 同業者の価格破壊に対抗して、ぼくは既存の価値観(それもとりわけ頑固にこびりついたヤツ) を破壊するつもりだったんですが、これがなかなか ^^;

first up date 03 August 2016

  1. Wilson, Edward O. 1992; 大貫 昌子 & 牧野 俊一(訳 1995) 生命の多様性(2 volumes). 岩波書店. pp.559 + 91.