溶存酸素

DO: dissolved oxygen

  仕事で海に潜ると、漁師さんやら通りすがりのおっちゃんやらに「酸素吸ってるのけ?」などと聞かれます。 「んにゃ。ただの空気」と返事をしても、イマイチぴんと来ないご様子。何か必殺の切り返しが欲しいトコロですw

  大気中の20%ちょっと、地殻成分中の質量の47%を占める元素であり、酸素は水素と結合して水になります。
  地球上に存在する水を体積で比較すると、97.5%が海水、残り2.5%が淡水で、淡水のうち60%が氷山、氷塊だとのこと (桜井 1997)。・・・それが全部溶けると海水面が何十メートルも上昇するの・・・?!?! およそ2万年〜6000年前、 縄文海退から縄文海進で何十メートルも海水面が変動した背景には、何か別の仕組みがあるんじゃないか、 そう思えてなりません。
  そのほか、生物の体を作る炭水化物、脂質、タンパク質の構成元素としてもかなりのウェイトを占めています。
  でもやはり、一般的に一番重要なイメージは、動物が呼吸によって消費し、植物が光合成によって生産する大気中の物質、 なのでしょうね。

  水中に生息する動物も、そのほとんどは酸素を呼吸しています。肺呼吸にせよ、鰓呼吸にせよ、皮膚呼吸にせよ、 体内に取り込まれた酸素は炭水化物を分解し、水と二酸化炭素に作り変えられ、その過程でATPという物質を生産します。 この物質が、生物の活動エネルギーになるわけです。

  エラ呼吸をする生物は、海水中に溶け込んでいる酸素を利用します。
  水中の酸素は藻類の光合成によって生産されるほか、波浪によっても供給されます。 水槽のエアレーションと同じ原理ですね。また、干潟や砂浜への潮の干満でも供給されます。
  地球表面の70%を占める海域です。大気中の二酸化炭素固定にも大きく寄与していそうなものなんですが、 北半球の熱帯雨林の影響が一番大きいような話になっているところが、イマイチ納得し切れません。
  一方、酸素を消費するのは動物の呼吸だけではありません。植物の呼吸でも消費されますし、 バクテリアの活動でも消費されます。また、粘土鉱物によって触媒作用的にも消費されます。 海底に設置したガラス器で密閉した中で酸素消費を経時的に計測すると(ベルジャー法)、 3段階に分かれて溶存酸素が消費される様子を見てとれます。最初に大型の生物が酸素を消費し、 次にバクテリアなど微生物が残った酸素を使い、最後に物理的な作用が働いて溶存酸素がゼロになります。

  固体は液体の温度が高いほどたくさん溶けますが、気体は逆に液体の温度が低いほどたくさん溶けます。 もうこれ以上溶けきれないギリギリの量を飽和量といいますが、海水への酸素の飽和量は、温度と塩分とで決まります。 この理論値がわかっているので、最近では化学的な分析を必要とせず、電気伝導度と水温から計算して溶存酸素量が わかるようになっています。
  そうかと思えば、赤潮プランクトンが高密度で発生した海域では、日中酸素が過飽和状態になることがあります。 気体が過飽和した状態がどんなものか説明しきれませんが、センサーを突っ込んで計測すると飽和濃度に対して 120%とか150%とかの値が出ることがしばしばあります。炭酸飲料みたいに泡立っているわけではないんですよ。 不思議です・・・。

21 July 2007; rewright 01 August 2016

  1. 桜井 弘 1997 元素111の新知識. 講談社. pp.431+28.