もう20年来、東大大学院の茅根研で実施している干潟生物の実習に参加しています。
もともと測量の部署の業務で(あくまでも当時の社内の話で恐縮ですが)、
生物を見て欲しいけど費用は出せないと言われて、しぶしぶサービス残業で始めました。
レンタカーやら交通費やら部下の人件費やらをぼくの担当業務から捻出したりして、
とっかかりはかなり大変だったんです。
独立後は必要経費と人件費を茅根さんに賄ってもらって、ありがたい限りです。
なぜぼくの仕事が評価されたか、
上司(費用は出せないといったヒト)はずっと不思議がっていました。
ぼくが提供した標本なんですが、学生たちが観察しやすいように、
ゴカイ科の吻を引き出しておいたんです。その年の実習で採集された全個体。
ただそれだけの事らしいです。
この東京湾のデータをなかなか発表できる段階までまとめることができずにいます。
ある程度アイデアが煮詰まりつつあるんですが、いくつか素材が足りないかな ...
東京湾ベントスのデータベースという着想は、この実習を始めてからずっと頭にあります。
東邦大の風呂田研究室(1999-2000年当時)にお邪魔した時にも話した気がします。
最近また東邦大にお邪魔する機会があって、やっぱりそんな話を少ししてきました
(実際にはほとんど多毛類とユムシの話題ばかりでしたがw)。
東京湾に今何がいるか、というのはわりあい簡単です。行って採ってくるだけですから。
ただ、過去何がいたかを証明するのはかなり難しいです。
ほとんどのアセス事業は成果を公表していないし(どの程度信用できるかは置いといて)、
学術的な文献もそれほど多くはないみたいですし。博物館に標本があれば別ですが。
シナガワウロコムシとか、サンバンセツバサゴカイとか、
東京湾がタイプ産地になっているものも決して少なくないのですが、
2000年以降に記載されたものは東京湾オリジナルと断言できません。
記載命名以前に何と混同されていたのか、不明瞭なものも出てくるだろうと思います。
母集団というのは基本未知のものです。ぼくらはそれを抽出サンプルから推定しなければなりません。
個体群の母集団は比較的簡単な作業です。単位面積当たりの個体数や湿重量(種の密度)を計測して、
ある程度分布の粗密を想定しつつ全体の面積に当てはめるだけです。
サンプル数が少ないよりは、じゅうぶん大きな方が信頼性は高くなります。
群集の母集団推定はちょっと一筋縄ではいきません。種の密度は個体群と同様に算出できますが、
サンプルの出現種数から母集団の種数を推定することがかなり難しく、
今主流の調査手法ではほぼ不可能なんじゃないかとさえ思います。
もし仮にじゅうぶんな予算が獲得できて、理想的な採集法でじゅうぶんなサンプル数をこなせば、
種数と面積の関係は分かっていますし、それを抽出する可能性を関数にするのも直感的には
組合わせ nCr を使うのかなぁ、なんて思っています。
余談ながら、群集は community ですが、個体群 population、母集団 population と、単語が重複します。 日本語で原稿を書いてから英訳すると、なんだか読みづらい文章になりそうな気がします。