写真の標本は第18剛毛節までの破損個体で、この分の体長が約2mmです。ほかに数個体得られていますが、 みな15-20剛毛節辺りまでしかありません。この標本が一番、状態がキレイです。
疣足に鰓をもたず、とっくり型(アンプル型)の疣足を第7剛毛節から第12剛毛節まで、6対もっています。
また、背腹両足枝間の感覚器も第1-5剛毛節と第9剛毛節以降にあり、第9剛毛節背面に小さな三角形のプレート
をもち、体表に柔突起をもちません。
この観察結果だけだと、石狩湾産イシカリトックリゴカイ Poecilochaetus ishikariensis Imajima 1989
に落ちてしまいます(Imajima 1989, 今島 2001)。これまでのところ、北海道でしか確認されていない種です。
やまだは大概、手元に標本さえあれば、既知の分布なんてあまり気にしません。それでも北海道産種が、中間域を
飛び越えて沖縄に出現、なんてのはちょっと戸惑います。
もっとも。
既知の鰓をもつ種でも、鰓は第20剛毛節前後よりも後方の疣足に生じるので、そこを確認できないこの標本では
結論を保留したい気もします(手元の文献で特徴に合いそうなのは、あとはバミューダ産種しかありませんが ^ ^;)。
Imajima, Minoru 1989Poecilochaetidae (Annelida, Polychaeta) from Japan. Bulletin of the National Science Museum, ser. A, 15(2): 61-103.
今島 実 2001環形動物 多毛類 II. 生物研究社. pp. 542.